コミュニケーションは「傾聴」が9割
2022.07.24
コミュニケーションは、難しい。
つくづくそう思います。ちょっとした言葉の綾みたいなものでも人を傷つけてしまうことはあるし、傷つけられることもある。私は気遣い的なスキルが高くないので、無神経な発言をしてひんしゅくを買ってしまうこともしばしばです。
かといって、気遣いスキルが高い人もそれはそれで大変そうです。私の妻はどちらかというとそのタイプなのですが、人の気持ちを慮るぶん、自分の言動にすごく注意しているので、自由に発言できていないように思います。気を使い過ぎてしまって、言いたいことも言えないんですね。
ことほど左様に難しいものではあるのですが、実はコツはたった一つ。ベストセラーにもなっていましたが、「聞く力」というものですね。
「コミュニケーションは、まず聞くことから」。そんなことは知っている、という人は多いでしょう。でも「じゃあできているのかどうか?」というとまた違うのではないでしょうか?
夫婦関係に置き換えると、「妻の話をちゃんと聞いていますか?」ということです。私が知る限り、これができている夫はかなり稀です。
私自身もできているかどうかといえば微妙で、「必死に聞くように努力」して、5割くらい聞けているかなあ…というところ。結局、半分は私が話してしまっていると思います。
実は、人の話を黙って聞く「傾聴」は非常に高度なスキルです。精神科医の高橋和巳さんは、著書『精神科医が教える聴く技術』の中で、「私は、長くカウンセラーの教育をしています。カウンセリング・スーパーヴィジョンと言います。そこで思うのは、『賛成して話を聞く』ことがいかに難しいかということです」と語ります。プロのカウンセラーでも人の話を肯定しながら聞くのはとても難易度の高いことなのだそうなのです。
なぜかというと、人の話をずっと聞いていれば、本心では賛成できない部分が必ず出てくるし、口を挟みたくなるから。「会話をしている二人の一方だけが『黙って聴くこと』は、人間にとって不可能に近いとさえ思います」と高橋先生は綴っています。
私たちはプロのカウンセラーではありません。「できるだけ相手の話を否定しないように、余計な口を挟まずに黙って聴く」だけで十分ではないかと思います。それでも相手は、自分の話を受け入れてくれている、と感じるはずです。
そのとき、パートナーの間に信頼関係が生まれ、コミュニケーションの質が変わってくる。私はそう思っています。
この記事を書いた人
田中 裕康(NCL)
編集者。ライフハッカー[日本版]副編集長。週刊誌記者などを経て、2013年に日経BPコンサルティングに入社。17年から日経BPに出向し、日経xwoman編集部(DUAL、doors)に所属。21年に退社、メディアジーンに入社。公務員の妻と2人の娘の4人家族。洗濯や掃除、子どもの外遊びなどは主に担っているものの、料理だけは完全に妻頼り。