ニューノーマルコミュニケーション視点で見る男女間職業格差
2022.06.06
多様性の時代はスピードの時代。ウェブやSNSがビビッドに世界中に情報を届け、変革を促し続ける未曾有の情報社会だ。今朝起こったウクライナの過酷で悲惨なニュースは、昼のワイドショーで日本のお茶の間に流れる。しかし。企業の対応と進化がすべからくスピーディーになるわけではない。身軽なベンチチャーならまだしも、日本には歴史を重ねた重厚長大な企業がいくつもある。そういう会社の中で醸成された、伝統、社風、というものは決して軽いわけではない。というより、容易く変革ができない厄介な重しと言ってしまってもいいかもしれない。
最たる事例の一つが男性社会だ。政治家、知事、経営者、管理職、そのどれをとっても圧倒的な比率で男性が多い。5年前のデータだが、日本において管理職の割合は11%程度。40%を超える米国、40%に迫ろうとしているスウェーデンやイギリスなどに比べてはるかに低空飛行のままだ。アジアを見れば、マレーシアや中国も4割近い数字がある。ちなみに韓国は日本と同程度。経済発展と比してみると、そのまま女性活躍度と比例しているように見える。
日本にも、カルビー株式会社のように、積極的に女性登用を推進し、そして成功をする企業も増えてきた。そして男性社会のまま朽ちようとしている日本の政治経済の斜陽っぷりを見ている限り、正しいのは前者のように見える。
国もかろうじて無策ではない。女性活躍推進法は、雇用において男女の差別をなくそうとして作られた法律である。しかし、男女平等の本質的な解決にはつながっているとは到底いえない。そもそも男性と女性のキャリアで大きく異なる点は、女性は結婚、妊娠、出産、育児、家事、介護などの影響が大きいことだ。
子育て世代である30代女性の就業率が減少していることがそのことを物語る。そして、そのまま元のキャリアに戻らず(戻れず)、キャリアをパートタイムなどに限定し活躍の幅を縮小するケースがあまりにも多い。
これは異論反論をいただくかもしれないが、子育てに関する適正は女性のほうがあると私個人は思っている。子育てはパパママ二人で行う共同作業であるが、ママの比重が多少多くなるのは適正なことだと思っている。そんな風土風潮も根強く、子を持った時点で専業主婦に移行する母親が多かったのは、ある意味自然なことであると考える。昭和的年功序列社会もそれを後押ししていた。仕事は男、家庭は女、そんな役割分担が「常識」となったのは、わりとどの国も同じだろう。
しかし、経済的事情がもはやそれを許さない時代になった。共働きでなければ「平均的な教育」を受けされることもできないほどに、日本の社会環境は変わってしまったのだ。
まだそれと同じくして、当然ながら女性の職業への意識も大きく変容した。そもそも能力の男女の差がない仕事はほとんどなのだ。賃金、仕事内容、序列、そのすべてにおいて不自然な男性優位社会の差はないほうが健全だ。そして今、専業主婦という選択ができなくなる時代。これはつまり本当の意味での男女雇用の平等が前提になる。しかしどこをとうみても、それを実現できる環境が整っていないというギャップをどうすればいいのだろうか?
欧米との差は何か? 最も違うのは採用基準
キャリアに関する考え方が、最も日本と欧州の違いであろう。一般的な学生はキャリアを中心に大学を選び就業先を選ぶ。その考えは、幼少期からしっかりと教育される。インターンシップは日本とは比較にならないほど長く、定職に就き続けることもない。その根底には、年功序列という言葉はかけらも感じられない、超実力社会の徹底がある。どの大学を出てようが、どんな研究をしてようが関係ない。何ができるか?だけが問われる社会の在り様が、シンプルに男女雇用機会の平等をもたらしているといえるのだ。
支払われる給与面で、パートと正規雇用の差がない点も挙げられる。できること、実力に対しての報酬であるがため、女性であるから、子育て中だからといった言い訳も存在しない。
このような社会であるからこそ、キャリア意識は芽生え、自分の仕事に対する認識は明確になり、当然社会進出も捗る。圧倒的な実力主義ゆえに、パートタイムの上司の指示で部署が動き、成果も生まれる。女性だから、パートだから、そんな甘えも、正社員だからというおごりも生じ得ない。
その背景には圧倒的な社会保障があるともいえる。女性が働きやすい国として名高いスウェーデンは税金の高さもさることながら、子育て支援の手厚さも非常に名高い。育休期間の長さ、その際の保障、教育環境の整備、そして男性の子育ての理解(男性のい球取得率9割!)
文化の違い、制度の違い、考え方の違い、そして圧倒的保障の違い。これらの差異は、女性の活躍推進に大きな壁となっているのは間違いない。
ニューノーマルな社会とは実力主義社会
一昔前、専業主婦が当たり前であった時代と今は大きく違う。経済環境も、女性の働く意識も雲泥の差がある。しかし、制度や考えそのものが、「昭和かよ!」なんてツッコミが入りそうな事例は山ほどある。そんな男性社会の中で、堂々とわたりあい、ポジションを築いている女性には頭が下がる。
だが、今女性の力を活用せずして、十分なリソースを確保し成果を上げることなど不可能な時代になっている。つまりそれは、欧米並みの実力主義社会の到来を意味する。
年功序列は、昭和的牧歌的、非常に安定した良い文化であったと私個人は思う。家庭を守り、単一職業につくことでの仕事スキルの上積みが自動で行われ、企業としての成長も起こしやすい幸せなルールであったと思う。しかしそれは、2022年の今、8割程度破戒されたといっていいだろう。
年功序列の後にくる制度は、実力主義となるのは自明だろう。そこに男女の差はなく、さらには年齢の差もない。競争はよりシビアになり、青森の税理士が鹿児島の小企業の顧問を受け、マンションの一室の一人社長が、ドイツの企業のサービスをクラウドで受ける時代だ。
雇用においても、外国人の採用はさらに当たり前になるだろう。男と女、などという差が矮小に見えるほどの新しい社会は目の前に、というよりすでに到来している。
この記事を書いた人
(NCL)高橋健
株式会社コミュニケーションズ・イン 代表取締役。雑誌編集、書籍編集から社内報編集者に転身し18年社内報を作り続ける。「読まれない社内報はゴミを刷ってるのと同じ!」という過激なポリシーのもの、徹底した読者目線重視の社内報制作を提案・実践し、一部の企業社内報担当からは面白がられ、一部の企業社内報担当からは煙たがられる。社内コミュニケーション改善にも乗り出し、研修、SNS戦略提案と運用にも乗り出している。「役に立とうとしている会社と人の役に立ちたい!」がモットー。