大谷翔平が世界一のパフォーマンスを引き出したのは「誰よりも野球を楽しんだ」から
2023.03.23
結局、いちばん野球を楽しんだ選手が勝った。それだけのことなのかなと思います。
WBC日本代表が決勝戦でアメリカ代表を3-2で破り、3度目の優勝を飾りました。2006年から始まったこの大会で、そもそも複数回優勝したことがあるのは日本だけだったのですが、3度目ということになり(優勝を逃した大会もいずれもベスト4)、リーグレベルはともかく、国際大会で世界で一番野球が強い国は日本ということは今のところ客観的事実なのかなと思います。
サッカーでも、W杯で最も多く優勝している国はブラジルですが、ブラジルのプロリーグが世界一なんてことはないので、日本は野球においてはブラジル的な立ち位置にいる国、といってもいいのかもしれません(体感的にはそれは言いすぎな気もしますが、国際大会の結果だけ見れば)。
その中で、今大会MVPに輝いたのが大谷翔平選手でした。投げて打っての活躍は言わずもがなですが、大谷選手のすごさはそこだけではないと思うのです。
例えば、日本代表で最も高い打率を残したのは大谷選手です(4割3分5厘)。打者としての総合的な攻撃力を表す指標として最も信頼されているOPS(出塁率+長打率)においても日本トップでした(1.345)。
投手としても、日本チームで最も防御率がよく(1.86)、投手の個人的な能力を示す指標として使われるWHIP(1イニングにどれだけの走者を出すかという指標)においても同様です(0.72)。
確かに「日本チームで最も優れた打者」も「日本チームで最も優れた投手」も、どちらも大谷だったといえると思います。しかし、WBCの大会参加チームすべてを見渡せば、大谷選手より打った打者も抑えた投手もそれなりにいます(多くはありませんが)。
しかし、もう少し視点を変えて数字をみると、違った姿が見えてきます。
例えば、今大会全体を通じて、投手として最も長いイニングを投げたのは大谷選手でした(9回と3分の2)。打席数においても33と第3位(1位はチームメイトの近藤健介選手とアメリカ代表のムーキー・ベッツですが、どちらも1打席差の34)。
そして、今大会で最も速い球(164キロ)を投げ、最も早い打球(191キロ)を放ち、最も遠くまで打球を飛ばした(136.5メートル)のも大谷選手だったのです。
誰よりも多くの投球回をこなし、非常に多くの打席に立ち、誰よりも早い球を投げて、打って、飛ばした選手ということです。いうなれば、今大会で一番グラウンドで野球を満喫した選手が大谷選手だったということだと思います(まあ、そもそも打って投げての両方をする時点でほかに比肩しうる選手はいないのですが)。
WBCの第1回と第2回で優勝したころの日本チームはイチローが中心で、楽しむというよりとにかく野球に打ち込む、命をかけて勝負する、そんなストイックさが前面に出ていたように思います。それはそれで結果にもつながったし、あのときも日本中が盛り上がったし、よかったと思います。
しかし今回は、野球を楽しむことが世界ナンバー1のパフォーマンスを引き出すということを大谷選手が証明してくれた。そんな風に思います。
きっと、仕事も同じですよね。誰よりも楽しむことが集中力や創造力を生み、結果として高いパフォーマンスと成果を得る。口でいうほど簡単なことではありませんが、いつでも楽しむ姿勢を持つことを忘れず、前向きに仕事したいなと思います。
この記事を書いた人
田中 裕康(NCL)
編集者。ライフハッカー[日本版]副編集長。週刊誌記者などを経て、2013年に日経BPコンサルティングに入社。17年から日経BPに出向し、日経xwoman編集部(DUAL、doors)に所属。21年に退社、メディアジーンに入社。公務員の妻と2人の娘の4人家族。洗濯や掃除、子どもの外遊びなどは主に担っているものの、料理だけは完全に妻頼り。